山里亮太さんの「天才はあきらめた」を読みました。
山里亮太さん(通称「山ちゃん」)は、漫才コンビ「南海キャンディーズ」のツッコミ担当。現在もテレビその他で大活躍しているのは、周知の通りの芸人さんです。
その山ちゃんが、芸人になる前と芸人になってから、そして現在までを振り返る、半自叙伝的な内容を綴ったのが本書。
さて山ちゃんは、どのようなことを考えながら芸人人生を生きてきたのか?
概要
山里亮太「天才はあきらめた」は、2006年に刊行された書籍「天才になりたい」を改題、大幅に加筆・修正を加えたもの。
- 芸人を目指そうと思ったきっかけ
- 関西の大学に進学
- NSC(吉本の芸人養成所)に入所
- コンビ「侍パンチ」結成~解散
- コンビ「足軽エンペラー」結成~解散
- 現相方・しずちゃんと南海キャンディーズ結成~現在まで
といった来歴が、山ちゃん本人の一人称で語られます。
特に2004年のM-1グランプリで、準優勝という結果を残して大ブレークした南海キャンディーズ。
以降は爆発的に知名度が上がり、しずちゃんは女優・CM業やボクシングで活躍、山ちゃんもピンでの仕事でテレビで見ない日は無い、という人気芸人っぷり。そこに至るまでのあれこれが綴られる、という内容です。
なお解説は、山ちゃんと仲の良いオードリー・若林正恭さんによる「ぼくが一番潰したい男のこと」。
感想
クズい
では「天才はあきらめた」の感想。読み終わってまず最初に感じたのは…
クズいね(笑)。
いや、これは本人も書籍内で認めていることですが、やっていることがクズい。特に最初に作った2つのコンビで、相方に対してしてきたことがヒドすぎる。
ネタ作りを担当していることから、相方のポジションを下に置き、徹底的にけなし、自分を相対的に上げていく。
結果、相方たちは山ちゃんについていけずに、あえなくコンビ解散。
読んでいて、「それはアカンよね…」という感想にならざるを得ない。
でも、その内容をあえて、自らほじくり返すような作業を経て文章化した、というのはなかなかできないこと。これはスゴイ。
これを読んで、「あ、自分もこんなとこあるかも…」なんて思う人もいるのでは。
しかしその後、二人の元・相方に対して特にフォロー的な記述が無いのもまた、山ちゃんらしい(笑)。
成功の理由
そんな山ちゃんがなぜ現在、成功を収めているのか?
その理由のひとつは、ライバルに対する挫折感と反発力。キングコング・千鳥・麒麟・笑い飯といった、同期・先輩芸人たちのブレイク。
自分の中でいろいろと理由を付けて、受けない・売れない自分を正当化していた山ちゃん。しかし他芸人の人気は、動かしようのない事実。
それらに(勝手に)傷つきながらも、反発の原動力としてネタ作りに邁進します。
もうひとつは、人生の転機となる出会いを逃さないこと。
生来の人見知りであるという山ちゃん。人間関係の構築はそれほど得意な方ではないよう。
ですが「天才はあきらめた」では、放送作家・パトロン・マネージャーなど、人生の節目となる要所要所で挫折後の復活のきっかけとなる人々に出会っています。
このような出会いをスルーしていれば、現在の山ちゃんは無かったはず。逆に言えば、人見知りでも見る目があれば、大事な関係を築ける、ということでしょうか。
笑いを向上させる不断の努力
そして本書で印象的だったのは、笑いに対する山ちゃんの地味な努力。
挫折や嫉妬を原動力とし、苦境の度にそれを乗り越えていく山ちゃん。
しかしその裏では、ネタに対するブラッシュアップなど、地味な努力をしていることが窺えます。
自信のあるネタでも、少しずつパターンを変えながら、いろんなステージでのお客さんの反応を見て改良していく。そしてM-1といった大舞台に臨んでいく。
山ちゃんって、現在のテレビでのしゃべりなんか見ていると、天才的なものがあると思います。
例えば何かボケやイジりをされた時、ものすごくスムーズに、豊富かつ適切なボキャブラリーでツッコミをして笑いを生み出している。
天賦の才能もあるでしょうが、地味な努力の積み重ねが今の山ちゃんを作り上げている。「天才はあきらめた」を読んで、そんな印象を受けました。
まとめ
以上、山里亮太さんの「天才はあきらめた」の感想でした。芸人人生を赤裸々に語ったその内容、興味深く読めました。
しかし読み終えて、一つだけ言いたいことがあります。
南海キャンディーズを結成しM-1でブレイクするも、相方・しずちゃんとまたしても不仲となる山ちゃん。その後和解を経て、南海キャンディーズとして再びM-1にチャレンジします。
その過程でしずちゃんに対する思いも語られ、ちょっといい話風だったりしますが…
まだホンマの気持ちを書いてないやろw
と感じました。元相方たちに対する記述に比べて、ちょっと遠慮してる感じが見受けられるんですよね~(笑)。次に本を出される時は、さらなる赤裸々な告白を期待したいところ。
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